今日が昔になる前に。はらだ有彩『日本のヤバい女の子』


私は「物語に従わないことが最高の復讐」だと思う。自分の身に起こったことにむりやり感動的な意味を見出さず、精神的成長としてつじつまを合わせず、物語を無効化する。あるいは、因果応報のない別の物語を自分で始めてしまう。勝手な展開で許可なくエンドロールを流そうとする何者かの一切登場しない、まったく新しい物語を。

はらだ有彩『日本のヤバい女の子』


はらだ有彩『日本のヤバい女の子』を読んだ。昔話に出てくるさまざまな女の子を紹介し、その行動の背景を読み解き、彼女らが現代だとどう生きていたかに思い馳せる一冊である。昔話がどれも2〜3ページで要約されているので、そういった物語への導入としても読みやすい。

生まれてきたとき、知らず識らずのうちにルールが渡される。今だってがんじがらめに様々なルールが存在しているけど、今以上にギッチギチに定まってた時代の話だ。そういう事柄に触れるたび、昔は大変だったんだなあと感じるけど、今この時代も何十年何百年後に「こんなめちゃくちゃな時代だったんだねえ」と言われるべきなのである。そう言われるように、価値観をアップデートしていくべきなのだと思う。

ある出来事が、脚色され洗練を経て「物語」にパッケージングされてしまう。そこに閉じ込められた女の子に「会いに行く」文章なのだと感じた。はらだ有彩さんは納得がいかない事柄に「それはおかしいだろ」と突きつける。どこまでもヒロインに寄り添う。その力強く書き綴った言葉、描いた妄想はたまにそりが合わない時があるけれど、こういう友達がいたら心強いだろうなと思う。疎遠になった友達を想うように、あらゆる物語の女の子の幸せを願っているのだと感じた。

何百年が経ち「物語」にはめ込まれ私たちが昔話になる前に、どれだけ価値観をアップデートしていけるか。それを問われているような事柄が、毎日のように発生している。どん詰まりで、ひどい価値観がのさばっていて、暑い日々だけれど、どうにか良い時代にしていけるといいな。

'Cause I'll be you and you'll be me
There's lots and lots for us to see
Lots and lots for us to do
She is electric, can I be electric too?

Oasis『She's electric』

日本のヤバい女の子

日本のヤバい女の子