振り返ります。順番はランキングではないです。
- しろうべえ書房『mochico』
- 吉田実篤『おるもすと』
- 内田洋介『Locket』
- 大森靖子「東京」
- 森博嗣Wシリーズ
- 中沢新一「熊楠の星の時間」
- 最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
- 宮沢賢治『春と修羅』
- 関西ソーカル3
- 雨宮まみ『東京に生きる』
- 川端康成『朝雲』
- 藤子・F・不二雄『モジャ公』
- ひらのりょう『ファンタスティックワールド』
- 山下賢二『ガケ書房の頃』
- 庵野秀明 責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』
- 安野モヨコ『くいいじ』『監督不行届』
- 今年も愉しみましょう
しろうべえ書房『mochico』
しろうべえ書房から出版された「幻想京都案内誌」。帯は外した方がかっこいいです。ご主人と奥様の二人で作られたアットホームな書籍。月の特集が最高だし、馴染み深いエリアの特集でなお楽しめました。それと知らずに中原中也ゆかりの地をうろちょろしていたことを知る。続刊出ないのかなあ。
吉田実篤『おるもすと』
しばらく「おるすもと」だと思ってた。クラフト・エヴィング商會でおなじみ吉田実篤さんの本。東京の世田谷文芸館で開催されたイベント限定の本で、参加して買うのが筋だけどなかなか行けなかった。クラフト・エヴィング商會が立ち上げた新たな出版レーベル「金曜日の本」から刊行された、本文も全て活版印刷の小説作品。吉田篤弘さんが12年間あたためていた小説だそうで、そのエピソードが本当かどうかわからない(そういう作風だもの)けれど、どうにも愛着がわく物語。
内田洋介『Locket』
23歳の編集者・内田洋介さんが一人で立ち上げた雑誌「 LOCKET」。もうジャケットから最高な本であることがわかる。第1集が「しあわせのありか」、第2集が「徒歩旅行」という最高っぷり。小さいことかもしれないですが、背表紙に統一感がないのもかっこいいと思います。インディー出版ならではですな。
大森靖子「東京」
2016年の音楽を語る上で欠かせないのが大森靖子さんの「TOKYO BLACK HOLE」。CD本体はみなさんご存知の通り素晴らしいんですが、限定版についていたこの日記も最高なのです。誠実で飛距離のある言葉を使う人だ。朝井リョウさんによる解説も合わせて美しい本。
最果タヒさんがまとめた「かけがえのないマグマ」もおすすめです。日常を信じること、全力で生きることで紡ぐことしか我々にできることしかないし、それを成し得た人々がきちんといるってこと、僕には救いでした。「音楽は魔法ではない」と歌う大森さんは今だれよりも魔法的な音楽を作っているし、奏でている気がしています。今年はライブ行きたいです。
森博嗣Wシリーズ
ファンサービスが過ぎる森博嗣さんの新作シリーズ。小説が好きになったのは間違いなく森博嗣さんのおかげで、その人の新作が未だに速いペースで出続けており(Wシリーズ今年分3冊、もう脱稿されてるそうです)、しっかりと面白い。一番好きなシリーズかもしれない。タイトルも毎回最高ですね。
最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』も、ブログをまとめた『きみの言い訳は最高の芸術』も装丁から最高密度です。本棚にさしていると、花を生けているような気持ちになって嬉しい。大森さんと惹かれ合うのがわかる『今の言葉』を使う人ですね。詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の映画化もめっちゃ楽しみです。ポスター欲しい。
宮沢賢治『春と修羅』
「原本のあるがままの姿を再現して伝える」ことを目的とした、近代文学館刊行「名著復刻全集」のうちの一冊。2016年は『シン・ゴジラ』と『この世界の片隅に』の年だったと思うんですが、シン・ゴジラの中で重要な意味を持っていたこの本が手に入って嬉しかった。「町家古本はんのき」という本屋で手に入れることができたのも嬉しい一致だったと思います。本作には雲とはんのきという作品も収録されているのです。
関西ソーカル3
縁があって、神野さんから直接買うことができた「関西ソーカル3」。1、2も見せてもらったんですがやりたいことやってる感じで素晴らしい。サイズ感と色味と紙質を褒め続けてて良くなかったなと思いました。神野さんの「文学の中の京都」は僕が最近興味持っている部分に近くて楽しく読みました。エッセイやらの他に「TWEET オカダダ」って書かれてどういうことかと思ったんですがもう見事な使い方。これは真似したくなりますな。
雨宮まみ『東京に生きる』
ずっと読もうと思っていた本。無料公開されていた序文に打ちのめされてしまって、なかなか手が出せずにいた。雨宮まみさんの文章や記事はネットでずっと追いかけていたのだけれど。今年に入って、マヤルカ古書店で本と目が合い購入した。読み始めた次の日に、雨宮さんが亡くなったニュースを聞いた。文章自体はとっくに公開されていたものなのに、亡くなったとわかった途端に何か違うものになってしまった気がしてしまう。本の感想を、著者本人に伝えたかったと思う。
川端康成『朝雲』
後輩が勧めてくれた本。2016年に読んだ百合作品で一番よかった。個人的には『この世界の片隅に』と対になっていて、選ぶこと、選ばれなかったことなどについて色々思い巡らせていました。最後の一文が美しい。そうありたい。
藤子・F・不二雄『モジャ公』
プライムビデオで、最初にみたのが21エモンだった。OP曲が削られていて悲しい。21エモンのアニメがめちゃくちゃ面白かったので調べたんですが、モジャ公と21エモンの漫画を組み合わせ、オリジナルのストーリーを付け加えたものがアニメになってるんですね。今年はT・Pぼん読みます。
ひらのりょう『ファンタスティックワールド』
去年一番感銘を受けた漫画。フルカラーで大版でちょいとお高いですがぜひ読んでみてください。バックボーンのSF名作群はさることながら、モジャ公とのシンパシーを感じる一冊です。世界は残酷で、美しい。
山下賢二『ガケ書房の頃』
京都で暮らしたことがある人なら一度は名前を聞いたことがあるであろう本屋・ガケ書房。そこの店主であり、現在ホホホ座の一員である山下賢二さんによる回顧録。取次を通して始める本屋の苦労が伺える一冊。ガケ書房には何度も足を運んでて、その度に「いい本屋だなあ、この店がもっと近くにあるといいなあ」と思ったものだった。裏側でこれだけ大変な思いをされているとは想像していなかった。
庵野秀明 責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』
2016年最重要書籍。企画の立ち上がりから作品が完成、公開に至るまでの様々を一冊にまとめてある。プリヴィズの導入やさまざまな困難、軋轢とどう向き合ってきたかが克明に記されている。さまざまな議論を呼んだ第五形態、そして天皇の不在。庵野さんは初代ゴジラに思い入れが深く、しかしそれは樋口さんのそれとは別種のものであったというオタクめんどくさいあるあるが凝縮されたような一冊。仕事のクオリティコントロールについて書かれていて、庵野さんの妥協しなさと樋口さんの尽くし具合がなんとかこの作品をあの到達点へ道揖斐いたことがわかる。日本における特撮は、その出自が戦時中のドキュメンタリーなんですよね。「現実 対 虚構」を描いたもう一つのドキュメンタリーである『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』、あの映画に打ちのめされた人にはおすすめです。
- 作者: カラー、東宝,庵野秀明
- 出版社/メーカー: グラウンドワークス
- 発売日: 2016/12/29
- メディア: 大型本
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安野モヨコ『くいいじ』『監督不行届』
上映前にこのインタビューに感銘を受けて、2冊とも買いました。「ネーブル」、とてもよかったです。もっとエッセイも書いてほしいなあ。
『監督不行届』は庵野さんの可愛らしさがぎゅうぎゅうに詰まってて愛おしくなり、あとがきに寄せられた庵野監督からの愛に胸が熱くなり。鎌倉に住みたくもなりました。
今年も愉しみましょう
本は「読めば読むほど良い」ってものじゃないと思うけれど、人生の一冊が何冊か見つかった年だったと思います。読みたいけど買えない本がたくさんあるので稼いだり借りたりしたいですね。ああ、微花もMdNもよかった。最近は雑誌が面白いです。今年も良い本と出会えますように。1月はこだまさんの『夫のちんぽが入らない』にやられたし、2月には『笑いのカイブツ』という容赦無く強い本が出ます。