とよ田みのる『金剛寺さんは面倒臭い』という豪速球ラブコメディ

時代を置き去りにする豪速球ラブコメディ漫画『金剛寺さんは面倒臭い』がめちゃめちゃ面白いです。2018年8月現在2巻まで出ているんですが、連載前に発表された3話構成の「読み切り版」がネットで読めるので、まずはそちらを読みましょう。面白いと思ったら単行本を即買いましょう。とよ田みのる作品は全ておすすめです。

エクストリームマンガ学園014-1 とよ田みのる 金剛寺さんは面倒臭い ~天の巻~
エクストリームマンガ学園014-2 とよ田みのる 金剛寺さんは面倒臭い ~地の巻~
エクストリームマンガ学園014-3 とよ田みのる 金剛寺さんは面倒臭い ~人の巻~

読み切り版が9回を豪速球で抑えるクローザーだとしたら、連載版は初回からパーフェクトピッチングを続ける先発投手の様相。いったいどこまでいけるのかワクワクしながら、毎回のように登場する「新たな試み」に唸る快作なのです。

すれ違いや三角関係を放棄し、あらゆる面倒臭い手順を放棄し、最短距離で思いの丈を「面倒臭い」金剛寺さんにぶつける。ダイジョーブ博士の手術が4回成功しないと辿り着けないぐらいの豪速球で進んでいく物語。2人の周囲にはさまざまな出来事や困難が立ちはだかるものの、そんなのは恋する2人にとって「本編に関わりのない出来事」なのだ。その上、それらはことごとく2人の影響を受けていく。2人の恋のキラキラが周囲をも照らしていく。

「もし君が私の娘と深くつながりたいと考えているならば、私とも深くつながることになる。人と人のつながりは君たちだけでは終わらないのだ。」
「君の人生という名の物語に大きく関わりの無いと思われる物が、ある日大きくつながるのだ!」

金剛寺さんのお父さんがいうように、この作品ではあらゆる人々が、物事がつながっていく。樺山くんのおばあちゃんがいうように、本当に大切なものとは縁でつながっていくのだ。偶然が縁となり、縁が運命を導くルーブ・ゴールドバーグ・マシン(作中にも登場しますね)のような作品。バチバチに可視化され明言された伏線たちが、どんな角度から本編を支え加速させ収束させていくのか、目が離せない漫画です。

友達の心配や 生い立ちのトラウマは
まだ続く僕たちの歴史の ほんの注釈

宇多田ヒカル『Play A Love Song』