大童澄瞳『映像研には手を出すな!』が、設定資料好きにはたまらない漫画だった

「映像研には手を出すな!」が抜群に面白い。第1話がまるっと試し読みできるのでぜひ読んでみてほしい。

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アニメ制作がやりたい設定おたくの高校一年生・浅草みどり、人物画が得意で同級生のカリスマ読者モデル・水崎ツバメ、お金大好きで弁の立つ切れ者・金森さやかの3人が「映像研」を立ち上げ、「最強の世界」を持ったアニメを作り上げていく物語。

作者の大童澄瞳さんが映像出身であるのが関係してくるのか、何気ないひとコマの柱のパースのつけ方で空間を豊かに描いたり、吹き出しにもパースをつけるなど大胆な表現手法も用いられている。フリーハンドで描かれたであろう線の一つ一つに愛と洞察力を感じる。

何より作者の大童澄瞳さんがこの主人公と同じく「設定大好き」「宮崎駿大好き」なのが伝わってくるじゃないか! 1話も2話も空を飛ぶアイテムが出てくるし! 日常からシームレスに飛び込む3人の「共有幻想」が美しい。僕も設定資料が大好きで、たびたび描かれる「設定資料」に惹きつけられ、どっぷりと浸ってしまう。銭湯とかコインランドリーとか団地とかコロッケとか、日常もしっかり美しいものごとに包まれているのがいいですね。主人公たちの通う学校の立地も最高すぎる。

羽海野チカさんが押井監督の「イノセンス」について語ったエッセイ*1の中で、背景(街)の作り込みに関して

「後ろにあるもの」が「その前にあるもの」を押し出すのです

と書いていたのを思い出します。とびきり魅力的な街に生きている魅力的なキャラクターと、生徒会との対決まである王道ストーリー。小粋で緩急のある台詞回し。空間の把握能力と表現力に優れ、細かい書き込みにも舌を巻く新人作家による最高の漫画です。続きが楽しみです。

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

*1:「スピカ」に収録されてます