子供のころ、読み聞かせしてもらった本をいくつか覚えている。その中でも強烈なインパクトを持ち、大好きだった絵本が『三びきのやぎのがらがらどん』である。いつかまた手元に置いときたいなと思っていたが、古本屋でたまたま見かけて購入した。再読したところ、やっぱり色褪せない魅力が詰まった絵本だと感じた。
むかし、三びきの やぎが いました。なまえは、どれも がらがらどん と いいました。
あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへ のぼっていきました。
冒頭からこうなのだ。「同じ名前なのかよ」と突っ込みたくなるし、太りにいくという表現がまた良い。もともと北欧民話で「Bruse(うなり声という意味らしい)」という名前だったものを、指輪物語などの翻訳で知られる瀬田貞二さんによって「がらがらどん」という口なじみの良い名前が与えられている。全体を通してつかわれる古めかしい単語のチョイスがまた美しい作品である。
山へ登っていくがらがらどんの前にトロルが立ちふさがり、食べられそうになるも「ぼくの次にくるヤギの方がでかいよ」とトロルに語りかけ、見逃してもらう。子供心に「負債を次の人に託していくのはどうなのか……」と感じていた。そしていよいよ3番目にやってきた「おおきいやぎのがらがらどん」とトロルの決闘が見せ場となる。ここの絵がまたかっこいい!!
大人になってから読み返すと、読み聞かせする立場からも面白そうだなと感じる。3匹のヤギの演じ分けが肝となりそうだ。橋を渡る時のオノマトペが、ヤギのサイズによって変えてあるのも楽しい。エンディングの「チョキン、パチン、ストン。はなしは おしまい」という締め方も口に出したくなる日本語で訳されている。
『となりのトトロ』のエンドロールに『三匹の山羊』という絵本をお母さんがサツキとメイに読み聞かせしているカットがある。これはきっとこの「三びきのやぎのがらがらどん」がモデルなのだろうなと思う。劇中に「トトロって、絵本に出てきたトロルのこと?」というセリフがあるが、がらがらどんに登場するトロルを指すのだろう。今思えば、トトロが大中小の3種類出てくるのも、この作品に因むんだろうか?(こっちは『3びきのくま』かもしれない)
好きな作品同士がどんどん繋がっていく感覚は、どこまでも嬉しいものである。
- 作者: マーシャ・ブラウン,せたていじ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1965/07/01
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