長い坂の絵のフレーム

 帰りの電車は時間帯のせいか空いていて、誰もぶら下がっていない吊り革たちが一斉に、同じように揺れるのを眺めていた。横に吹き飛んで行く車窓の風景が綺麗だ。電車は苦手だと思っていたけれど、人が多い場所が苦手なだけなんだろうな。いややっぱり、誰かに運ばれるのはなんだか苦手だ。自転車とかが良い。

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 大阪まで、前のバンドメンバーがやっている古着屋へ遊びに行ってきた。今の家からだとすぐに大阪まで出られるのだけれど、親譲りの出不精で子供の頃から損ばかりしている。店舗と同じフロアに事務所があって、オリジナルブランドの服を作成したり撮影のスケジュールについて相談したりとわいわい賑やかで華やかなお店だった。置いてある商品を一通り眺めていたら、所狭しと「良い」と思った服がぎゅっと詰まっていて、たまらなく愛おしい。店に集まっている人もお洒落で面白い人ばかりで、ピクミンのモノマネだとかコンビニの前で逆ナンされた話だとかユニークな話をたくさん聞けた。「愛はコンビニでも買える」ってのはあながち嘘じゃない。

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 ドタバタしていてあまり時間がない中、生活やら音楽やら恋愛やらの話の隙間に「友達とバンドメンバーは、少し違うよな」という話をした。友達はもちろん大切だけれど、バンドメンバーは何だろうな、同じ釜の飯をって感じで違う関係性であるように思う。友達より雑に扱って良い気もするし、友達より近くに感じる時もある。つまるところ信頼関係なのか、なんなのか。

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 行きの電車の中は少し混み合っていて、誰かのお弁当の匂いがした。途中の駅で降りて行ったお弁当の残り香に、横に吹き飛んでいく大阪の町並みに、大阪の呼吸を感じた。ぎゅうぎゅうに詰まって並ぶお店が弁当箱のようで、「暮らし」というよりも「生活」がある大阪の風景は美しい。古ぼけたラブホテルと飲み屋、とぼけた公園と歳とるのやめたおばあちゃん。汚い川にそれでも雪がれる心と、立ち並ぶ桜の木。フォークソングをパンク調で歌う高校生バンドみたいな店と、やたら安くて美味いラーメン屋。派手なドラッグストアに立ち並ぶ食品サンプル。どこにでもあるチェーン店が一揃い。好きな街が2つぐらい増えて、帰り道でやおら誰かと話したくなったけれど、しばらくはこの孤独を育ててあげないといけない。それぞれにそれぞれの生活があり、それぞれの目的地がある。


HINTO 『なつかしい人』

 友達とバンドメンバーは違う。負けないように背筋を正していきたい。