携帯電話が主役の作品『東のエデン』

連休中に、アニメ『東のエデン』を見ていた。これは神山健治監督による2008年のアニメで、荒いとは思うが大好きな作品の一つだ。今見ると911以降、311以前の空気感が見事にパッケージングされていると思う。知らない人に向けてざっくり説明すると、12人の「…

「ひとりぼっちよりもマシだから愛してる」FUKAIPRODUCE羽衣の良さについて

「ライブ行きたかった」という念を込めて。詳しい解説はないです。FUKAIPRODUCE羽衣という劇団は、枡野浩一さんのツイートで知ったのだと思う。 『作・演出・音楽の糸井幸之介が生み出す唯一無二の「妙―ジカル」を上演するための団体』とのことで、いや本当…

2月のソーダ割り

「雪の日はよう走らんですよ」と運転手さんが云う。 「まあでも、うちの会社は全車スタッドレス履いてますから」自慢気な運転手さんの言葉にへえすごいですねえと相槌を打つ。同じことをつい最近、他の運転手さんからも聞いたのだった。話しかけられるのが苦…

2016年に読んだ、良かった本

振り返ります。順番はランキングではないです。 しろうべえ書房『mochico』 吉田実篤『おるもすと』 内田洋介『Locket』 大森靖子「東京」 森博嗣Wシリーズ 中沢新一「熊楠の星の時間」 最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』『夜空はいつでも最高密度の青色…

至高のポップソング、キイチビール&ザ・ホーリーティッツ『かっぱえびせん』

ポップソングの理想はリピート再生が「やめられない、とまらない」ことなんじゃないか。そしてそれは、そのまま名コピー「やめられない、とまらない、かっぱえびせん」に通ずるものなのではないか。2016年の初ライブ時から「かっぱえびせんの来年のCMソング…

大童澄瞳『映像研には手を出すな!』が、設定資料好きにはたまらない漫画だった

「映像研には手を出すな!」が抜群に面白い。第1話がまるっと試し読みできるのでぜひ読んでみてほしい。spi-net.jpアニメ制作がやりたい設定おたくの高校一年生・浅草みどり、人物画が得意で同級生のカリスマ読者モデル・水崎ツバメ、お金大好きで弁の立つ切…

2017年は「パンパンの塔」を聴こうな

「パンパンの塔」というバンドをご存知だろうか。知らないという方にはまず「骨」という曲をおすすめしたい。テクニカルなことをやっているし洗練された音楽で注目すべき点は多いのだけれど、なによりその短編小説めいた歌詞の世界に引き込まれていく。「ラ…

2016年によく聴いていた曲

振り返ります。僕はどうにも1月から3月にかけてを「去年のおまけ」と捉えている節がある。 yahyel「Once」 Mammal hands「quiet fire」 downy「凍る花」 片想い「Party Kills Me (パーティーに殺される! )」 Nakamura Emi「YAMABIKO」 米津玄師「LOSER」 …

冬の結び目

自殺したミュージシャンのMCをBGMに削る文字数 「そんな日はいつでもいいから呼んでね」と試さないから切れない魔法 手のひらで踊るように溶けていく雪は死ぬのか生き返るのか 捕まえた指の先には秋の色 ジェラート・ピケのピケあたりから 包丁を研いで 革に…

まだ喉笛は燃えているか

悪い風邪を引いたみたいで、ずっと喉が熱い。小学生の頃、喉を焼いてしまって、一週間だけ入院していたことがある。声がうまく出せなくなった。治り切ったはずの今でも、どこか本当の声じゃない気がしている。子供の時分、入院生活は暇で暇で、テレビを見よ…

もっと力強い生活をこの手に

年末からこつこつと、密かに作っているものがあります。これをだせたらいいな。 今週のお題「2017年にやりたいこと」

うつりゆく季節と旬と「二人セゾン」春が来そうでさびしいだけ

「二人セゾン」いい曲ですね。 サビから始まり、日常の変化を歌うAメロから、美しい入りのBメロに耳を惹かれ、サビに回帰する。Aメロがカノン進行でBメロが小室進行、サビは王道進行という構成。季節の中でも秋から冬にかけての淋しさが感じられるのはAメロ…

プロフェッショナルに触れる

最近できたばかりの珈琲屋に行ってきた。センス溢れる外観なのに、やたらと尖った店名が目を引く。他にお客さんがいなかったので、店員のお姉さんとずっと話すことができた。まだ学生さんらしいんだけど、所作のひとつひとつがプロフェッショナルで嬉しくな…

左耳

イヤフォンがぶっ壊れているのを忘れていた。一度高級なやつを買ったものの、すぐ壊れてしまったので、なんとなく安いものを買って使っている。最近はiPhoneに付属してたやつをずっと使っていた。音楽は好きだけれど、移動中、仕事中に聴く音楽にそこまで音…

てろてろ/toykey punky

仕事を終えて外に出たら、息が白く染まった。冬が来たんだと嬉しくなる。息が白くなるのは子供の頃から大好きで、少し気取って歩いてしまう。水分は口からこんなに出て行くのだと思い出し、息はこんな形をしていたのだと思い出し、言葉がこんな色だったら良…

soratobiwo『シャンハイミー』がとても良い

大阪のロックバンド「soratobiwo(ソラトビヲ)」の曲「シャンハイミー」が、そのMV含めてとても良いんです。日本のシャンハイこと南京町で撮影されてそう。 カラフルなポップってまさにこの曲をいうんじゃないだろうか。それでいてテクニカルだしハイトーン…

サニーデイ・サービス@磔磔を観てきた(11/23)

観てきた。 傑作アルバム「DANCE TO YOU」のツアーライブに誘ってもらったので観に行ってきた。京都の老舗ライブハウス磔磔は、立地条件その他の影響で21時までしか音が出せない箱である。「昔は遅くからはアコースティックでやったりしていた」という曽我部…

絵のない絵本

昔書いた絵本原作が出てきた。 なるべく七五調にしていて偉い。

37.2℃の優雅な復讐/イロメガネ

「イロメガネ」が良いという話です。ちぇけら。

何も伝えられなかった僕らにとって。宇多田ヒカル「Fantôme」に寄せて

店頭でCDを手に取った瞬間、その物理的な重さに驚いた。歌詞カードが分厚くケースがしっかりしている。先行配信されていた3曲から、きっと内容についても重い作品になるのだろうなと思っていた。 絞られた音数、らしさを感じるメロディのリズム構成、そして…

ポルカドットスティングレイの初ワンマンを観てきた(10/15)

10月15日、福岡のインディーズバンド「ポルカドットスティングレイ」が、東京で初のワンマンライブ「ポルフェス02 教祖爆誕ワンマン」を行なった。ギターヴォーカルで「教祖」である、雫さん24歳の誕生日に。舞台となった「新宿レッドクロス」は、老舗の中華…

夜が膨らむ

大学生の頃、よくパンを焼いた。始めたきっかけはよく覚えていないけれど、初めて焼いたパンのことはなんとなく覚えている。インターネットで知り合ったレシピ様の忠実かつ集中力のない下僕として言われるままに作業してみると、思いのほかしっかりとした美…

楕円の夢を眺めて、踊りながら帰る

帰り支度をして、外に出たらすっかりと秋だった。薄着で来てしまったなと少しだけ悲しいふりをしたものの、細胞のひとつひとつがはしゃいでいるのが解る。大好きな温度でじっとしていられなくなる。夏の葬儀がずっと続いているような、淋しくて華やかなお祭…

長い坂の絵のフレーム

帰りの電車は時間帯のせいか空いていて、誰もぶら下がっていない吊り革たちが一斉に、同じように揺れるのを眺めていた。

麗しき口元、食は細い

前回までのあらすじ:「80円増し」という安さから、軽い気持ちで「麺2倍」にした食細いマン。目の前に現れたのはなんかハワイで流行ってるパンケーキみたいな代物で……?食細いマンの運命やいかに!!(つらい)— スケロク (@yuuskee) 2016年9月27日食べ終わ…

知らないということを知ること

勝手なイメージや憶測で語るのはよくない、という経験をした。何度も繰り返してるんだけど、なかなか学習できない。今回はありがたいことに、身近なところに関係者がいて教えてもらえたけれど、そんなのは偶然でしかない。 知らないことをもっと知りたい、い…

真っ赤に塗って嘘にした

「密室の恐怖実験」という映画のメインテーマをよく口笛で吹いている。キル・ビルの中で印象的な使われ方をしていた曲で、曲名を調べてびっくりしたものだった。 口笛は子供の頃、湯船に浸かりながら父親に教えてもらった。音が出るまで何日かかかったように…

「マージャンパイは押入れ 背広のうら」

古道具屋は面白い。誰かが使っていたものや新古品で流れてきたもの、それぞれの来歴に想いを馳せ、妄想し、耳と目を傾けることができる。耳を傾けすぎたせいで置き場所のない椅子や使いどころのない机を買ってしまうのも一興である。そういったものを掴まさ…

ポルカドットスティングレイ、その後。「骨抜きE.P.」と人魚MV

気づけば「テレキャスター・ストライプ」は100万回再生を越え、今や時のバンド「ポルカドットスティングレイ」。以前急いで書いた紹介記事がめっちゃ読まれたので嬉し恥ずかしでした。Facebookで紹介してくれた方々ありがとうございます。辿りようがねえ。su…

ヒマワリ/Helianthus annuus

列車にて遠く見ている向日葵は少年が振る帽子のごとし /寺山修司 少し前から、部屋に花を飾るようになった。きっかけは「例年にまして元気がない」という残念かつ至極切実な問題を解決するためのものだったけれど、試しに買ってきた百合の花がとにかく素晴ら…