うつりゆく季節と旬と「二人セゾン」春が来そうでさびしいだけ

「二人セゾン」いい曲ですね。

 サビから始まり、日常の変化を歌うAメロから、美しい入りのBメロに耳を惹かれ、サビに回帰する。Aメロがカノン進行でBメロが小室進行、サビは王道進行という構成。季節の中でも秋から冬にかけての淋しさが感じられるのはAメロ、Bメロ共に最後のコードが効いている気がする。衣装も紅葉した欅のような色合いで、バレエモチーフのダンスが映えるスカート丈ですね。セゾンはフランス語で「季節」以外にも「旬」という意味があるけれど、この「旬」の意味合いがとても重要な曲で、重要視しているグループなのだと思う。
 
 MdNにジャケット撮影に密着した記事が載っていて、とても興味深かった。これだけの人数を整列させて写真を撮るとどうしても「修学旅行の集合写真」のようになってしまうけれど、うまいこと並べる人がいるんだとか。たしかに配置の妙が光る感じがする。メンバーのことは何ひとつ知らないけれどそう思う。MVでもジャケットでも「光」の扱い方が上手い。

 「冬のタバコが一番美味しい」と、ギターを教えてくれた人が言っていた。寒い日が続くと、その人を思い出す。京都の寒さに締め付けられていて、自分の輪郭をどうにも気づかされる。寒さと淋しさは周波数が似ていて、まぎわらしいなといつも思う。それでも寒さは、僕の憧れる美しさにも似ている。日本に生まれたからなのか、冬の寒さに時間の経過を感じる。寒くなってくるたびにもう帰らない一年を思って、背筋を正す。人生をやり直すなら常夏の海だと相場は決まってて、それはもう時間の「淋しさ」に気づかずに済むからなんじゃないか。

 春・夏・秋・冬の四つ打ちに翻弄され、踊り狂っているうちに人生は終わる。それでいいのだと今は思う。春には春の、夏には夏の楽しみ方を覚えて人生を過ごしていけるといいなあ。美しいなあ。今しか見れない流星群を見に、欅坂のライブに行きたい、だれか一緒に行きましょう。僕もセゾン。

街はどんどん冬になる。夜もどんどん長くなる。
このまえの夏の景色はだんだんに遠くなっていってる。
そうこうしてるうちにクリスマスが来て、正月が来る。
この世では、うつりゆく季節がいちばん偉い。

平賀さち枝さんのダイアリーより

一人の男の出現によって、季節がはっきりと区切られていくのを、秘かに自分の心の中に感じていた。私、20才。彼、27才。冬の終わり頃だった。

荒木陽子「愛情生活」

月刊MdN 2017年1月号(特集:アイドル―物語をデザインする時代へ / 表紙 欅坂46)

月刊MdN 2017年1月号(特集:アイドル―物語をデザインする時代へ / 表紙 欅坂46)

二人セゾン

二人セゾン

春が来そうでさびしいだけ

春が来そうでさびしいだけ