絵のない絵本

昔書いた絵本原作が出てきた。
なるべく七五調にしていて偉い。

大きな大きなその街に 

小さな本屋がありました。 




そこには素敵な本ばかり。 

ここにしかない本ばかり。 

今日も誰かがやってきて
若い店主のオススメに 
満足しては帰ってく


あるお客さんは言いました。 


「わたしはとても忙しく 
 眠る時間もない始末 
 そんな私にお似合いの 
  素敵な本を一つくれ」 

本屋さんは答えます 

「ちょうど良いのがございます
 忙しい人にぴったりと
 文字が無いのに雄弁な 
 眠りの果ての風景画」 


「ああこの一冊に逢いたくて 
 私は今日まで起きてきた 
 これをもらうよ本屋さん 
 眠れたときにはまた来ます」 




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次のお客はお婆さん。 


「もしもしお若い本屋さん。 
 本をひとつ見せてくれ
 好きな本は数あれど 
 いまや心にひびかない
 心も年をとってきた 
 私を揺さぶる本をくれ」 

本屋さんは答えます。 

「それは悲しいことでしょう 
 好きなものも色あせた 
 貴方は朝日をみるべきです。 
 これは遠い遠い国   
 何百年も先の日の 
 過去になりゆく未来の書 
 昇る朝日の行き先を 
 読んでみては如何でしょう」 



「ああなんて分厚い本! 
 それ程までに先の日は   
 書くべき事が起こるのね
 私もそれをみてみたい 
 これをもらうわ本屋さん
 未来が来たら、また来ます」 




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ときにはつまらぬ 客も来ます 
そんな相手も なれたもの 



「これこれそこの若いヤツ 
 このみずぼらしい店内に 
 『女を従わせる本』ないか 
 まったく女は身勝手で 
 私の下につきやしない 
 そういう本があるのなら   
 四の五のいわずに出してみろ」 

これには本屋もわるだくみ 

「なるほど苦労してますね 
 お顔を観れば わかります 
 きっとそれなら街一番 
 大きい本屋にあるでしょう 
 あの本屋の棚の内 
 『ファンタジィ』のところを探しましょう」 

【以下省略】