戦場のフリージャズとオールドポップ「機動戦士ガンダム サンダーボルト」

 ずっと楽しみにしていた「機動戦士ガンダム サンダーボルト」の劇場上映を見てきた。「試験機が飛び交う戦場で、フルアーマーガンダムと高機動型ザクが激突する」というガンプラMSV世代(結構上の世代だ)狙い撃ちのコンセプトが軸となっているが、「MOONLITE MILE」を書いてた太田垣康男さんらしいこだわりや戦争描写が見どころで、僕も原作漫画の大ファンである。アニメーションは原作の魅力を最大限生かしつつ、映像ならではのモビルスーツの迫力、スピード感。さらに鬼気迫るキャラクターの表情、菊地成孔さんの最高な音楽が乗っかっていてさながら「フルアーマーガンダム」そのもののような怪物作となっている。原作からの変更点は、どれも膝を打つ感じ。1話目のPVめっちゃバードマンっぽかった。

 フリージャズに身を委ねながら「ガンダム」を駆るイオ・フレミングと、オールドポップに浸りながら「ザク」を手足として操るダリル・ローレンツ、そしてそれぞれのモビルスーツが主役を担う。僕は菊地成孔さんのファンなので、このスコアの数々に痺れっぱなしの70分だった。本人の言葉を借りれば、フリージャズと50 ’sポップの「コスプレ」である楽曲。原作で名前が挙がっていたジャズよりもイオが聞いてそうな感じで、50’sポップのシュミレートのうまさにも舌をまく。これどういうフィルターなんだすっげえそれっぽい。コニーフランシスっぽいやつとかその辺の空気感ががっつり再現されている。

 これら性格の異なる楽曲が、それぞれの「戦闘中に聞いている音楽」として交互に耳を支配する。鑑賞後、興奮と苦しさを背負った体をひきずり、サントラのアナログ盤を聴き漁る。A面にだいたいジャズ、B面にポップソングが並べられていて、さながらVディスク*1のような感触がある。

 戦地で「音楽でもないとやってられない」人々が描かれていて、それが胸を打つ。初めて銃を持たされた整備士の「戦場で音楽を聞きたくなる気持ちが分かったよ」という台詞も印象的である。鼓舞する音楽と、なだめてくれる音楽。僕の日々にもそういった役割の音楽がある。

 エンドロールでかかった「 dCprG」の曲がまた最高でした。アナログには収録されてないので、CDも買わなきゃ。劇場限定のザクのプラモも買ってしまった。クリアーのプラモは細かい事気にせず組み立てられそうで良い。一輪挿しの横に飾りたい。

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*1:アメリカ軍が戦争中、士気高揚のために戦場へ投下したレコード。専用のプレーヤも同時にパラシュートで落としたそうだ